東京生まれ、東京育ち。
東京都立西高等学校卒業。
1986年東京大学工学部卒業。
1986年ソニー株式会社入社、本社開発研究所にてプリンター技術開発に従事。
1988年米国マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute Technology) Media Labに海外留学、客員研究員として、ホログラム技術研究に貢献。1)
1995年ソニー中央研究所において、ホログラム関連研究プロジェクトを発足させ、「即時ホログラムプリントシステム」を国際学会SPIEにて発表。2)
同技術成果をベースに、自ら社内ベンチャー・本社直轄プロジェクトを 立ち上げ、HPS事業開発室室長としてプロジェクトを牽引。 社内外のホログラム技術の基礎研究から応用開発まで貢献する一方、
実用化実績としては、模倣品対策ツールとして「個別ID記録ホログラム」量産化を世界で初めて成功させた。
同ホログラムは、2010年よりソニーグループ製品等に採用されている。
1) Stephen Benton, Sabrina Birner, Akira Shirakura "Edge-Lit
Rainbow Holograms" SPIE Proceedings Vol. 1212: Practical Holography IV, Jan. 1990.
2) Akira Shirakura, Nobuhiro Kihara, Shigeyuki Baba, "Instant Holographic Portrait
Printing System", SPIE Proceedings Vol. 3293: Practical Holography XII, Jan. 1998.
「アートとサイエンス、そしてラボ」
ホログラムをメインとした技術を、幅広く開発し実用化を目指す企業として、「アーティエンス・ラボ」は誕生しました。
アーティエンスとは、アート(ART)とサイエンス(SCIENCE)を融合させた造語です。私は、学生の頃から芸術と科学技術に
興味をもち、漠然とどちらにも関係する世界に身を置いてきました。大学では、工学部で学びながら、仲間とのバンドなどで
音楽制作活動に時間を費やしました。卒業後就職したソニーでは、「ハードとソフトは車の両輪」というスローガンのもと、
技術のみならずコンテンツの重要性を知りました。留学先のMIT(Massachusetts
Institute of Technology) Media Lab
では、純粋な研究者というより表現する手段として技術を学びに来ているアーティストに多く出会い刺激を受けました。
そのMITで出会ったホログラム。光の回折現象を使って3次元画像を表示したり、薄いフィルムで光を制御したりできる
この技術は、様々な可能性を持っているにもかかわらず、残念ながら産業としての活用はまだ限定されています。昨今では
単なる空中投影像のことをホログラムと呼ぶ誤用も多くみられるようになってしまっています。
我々の挑戦は、ホログラム技術を産業として創出し、継続的に発展させること、です。
ホログラムは「奥が深い」・・3次元を表現できるからというだけではありません。知れば知るほどその可能性を感じます。
実用化するには、誰もが簡単に使えるものにしなければなりませんが、それを実現するには、物理・化学・電気・メカなど
幅広く深く理解する必要があります。MITでの恩師、故ベントン教授には「ホログラムを真に理解するには少なくとも3年
かかる」と言われました。私は、関わってからかれこれ、もう30年経ちます。私の場合は単に頭が悪いからなのですか、
未だに真に理解しているとは言えず、日々新たな発見があります。
30年前は、アートとしてのホログラムを学ぶ環境が美術大学などにありましたが、残念ながら今ではほぼ無くなって
しまったと聞きます。業界全体の継続的な発展がないと、ホログラム記録に必要な材料が得られなくなったり、技術や
ノウハウの継承が途絶えたりするリスクが出てきます。せっかくの貴重な芸術や科学の成果が埋もれてしまうのはもったい
ないことです。この状況を好転させるためにも、産業の創出が重要と思うのです。
社名の最後につけた「ラボ」は、産業を創出するための技術開発をおこなう工房の意味合いを込めたものです。お客様の
ご要望のその先にあるものを、引き出しの中の技術の種と結びつけて実用化に向けて試行錯誤します。まずは手を動かし
やってみる、たいていは思った通りにはならない、たまに思った通りになる・・・失敗、発見、感動、新案湧出・・を繰り返し、
やりたいことは増える一方です。この活動をやっていると、実は、芸術探究と技術開発はアプローチやプロセスは類似して
いるな、と思うことがあります。また、技術の理論解析だけで行き詰まったときには、感性だけを信じて深掘りして作り
あげるのが功を奏するという経験をすることもあります。改めて、期せずして「アート」と「サイエンス」の両方を社名に
入れた意味、目に見えない「気」のようなものを感じています。
悪戦苦闘しながらも地道に活動してきた経験から、ホログラムが活用出来る領域、可能性は、拡がっていると実感している
今日この頃・・・これからも、社名に込めた夢の実現を目指して、より一層精進し、芸術と科学技術を融合させるだけではなく、
そこから新たな産業を生み出していきたいと考えています。
引き続き、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。