お知らせ

2020年2月26日

「アートとサイエンス、そしてラボ」 (創立7周年にあたってのご挨拶)

ホログラムをメインとした技術を、幅広く開発し実用化を目指す企業、「アーティエンス・ラボ」を創業して、早くも7年経ちます。この機会に改めてこの会社名にこめた思いを記してみたいと思います。

アーティエンスとは、アート(ART)とサイエンス(SCIENCE)を融合させた造語です。私は、学生の頃から芸術と科学技術に興味をもち、漠然とどちらにも関係する世界に身を置いてきました。大学では、工学部で学びながら、仲間とのバンドなどで音楽制作活動に時間を費やしました。卒業後就職したソニーでは、「ハードとソフトは車の両輪」というスローガンのもと、技術のみならずコンテンツの重要性を知りました。留学先のMIT(Massachusetts Institute of Technology) Media Labでは、純粋な研究者というより表現する手段として技術を学びに来ているアーティストに多く出会い刺激を受けました。

そのMITで出会ってしまったホログラム。光の回折現象を使って3次元画像を表示したり、薄いフィルムで光を制御したりできるこの技術は、様々な可能性を持っているにもかかわらず、残念ながら産業としての活用はまだ限定されています。昨今では単なる空中投影像のことをホログラムと呼ぶ誤用も多くみられるようになってしまっています。

我々の挑戦は、ホログラム技術を産業として創出し、継続的に発展させること、です。

ホログラムは「奥が深い」・・3次元を表現できるからというだけではありません。知れば知るほどその可能性を感じます。実用化するには、誰もが簡単に使えるものにしなければなりませんが、それを実現するには、物理・化学・電気・メカなど幅広く深く理解する必要があります。MITでの恩師、故ベントン教授には「ホログラムを真に理解するには少なくとも3年かかる」と言われました。私は、関わってからかれこれ、もう30年経ちます。私の場合は単に頭が悪いからなのですか、未だに真に理解しているとは言えず、日々新たな発見があります。

30年前は、アートとしてのホログラムを学ぶ環境が美術大学などにありましたが、残念ながら今ではほぼ無くなってしまったと聞きます。業界全体の継続的な発展がないと、ホログラム記録に必要な材料が得られなくなったり、技術やノウハウの継承が途絶えたりするリスクが出てきます。せっかくの貴重な芸術や科学の成果が埋もれてしまうのはもったいないことです。この状況を好転させるためにも、産業の創出が重要と思うのです。

社名の最後につけた「ラボ」は、産業を創出するための技術開発をおこなう工房の意味合いを込めたものです。お客様のご要望のその先にあるものを、引き出しの中の技術の種と結びつけて実用化に向けて試行錯誤します。まずは手を動かしやってみる、たいていは思った通りにはならない、たまに思った通りになる・・・失敗、発見、感動、新案湧出・・を繰り返し、やりたいことは増える一方です。この活動をやっていると、実は、芸術探究と技術開発はアプローチやプロセスは類似しているな、と思うことがあります。また、技術の理論解析だけで行き詰まったときには、感性だけを信じて深掘りして作りあげるのが功を奏するという経験をすることもあります。改めて、期せずして「アート」と「サイエンス」の両方を社名に入れた意味、目に見えない「気」のようなものを感じています。

7年間の活動は思い通りに進んだとは言えませんが、地道な悪戦苦闘の中から、ホログラムが活用出来る領域、可能性は、拡がっていると実感している今日この頃・・・これからも、社名に込めた夢の実現を目指して、より一層精進し、芸術と科学技術を融合させるだけではなく、そこから新たな産業を生み出していきたいと考えています。引き続き、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

株式会社アーティエンス・ラボ
代表取締役 白倉 明